内的設定と訓練

更新が遅くなりました。前回は外的設定について書きましたが、今回は内的設定について書こうと思います。

起きていることを無意識も含めて扱い、転移としてみていくあり方は精神分析・精神分析的心理療法に特徴的で、そのようなものにならしめているといえます。内的設定とは治療者が内に持っている設定のことです。このような設定を保持するに至るには、治療者側の訓練が欠かせません。

コロナ禍などで会うことがなかなかかなわなくなったときなど、外的設定が何らかのかたちで破損した時、内的設定が分析的過程を維持したり、修復しようとします。それには、治療者が破損していない設定を内に持っていないと不可能です。1)

災害のような大きな外的要因による破損でなくとも、日々の臨床で転移逆転移の中で設定の逸脱は起こりえます。それにどれだけ自覚的になれるか、心的なこととして考え、言葉でやりとりしていけるかが、分析的臨床では大切でしょう。個人的には初心であるほど外的設定に助けられることが大きいように思います。設定は現実的な限界でもあり治療者と患者双方を守るものです。ただし、外的設定を守ること、外的設定の意味を実感を持って体得するにも訓練が必要に思います。どれだけ分析的なあり方が内的に体得されているのかが、よく議論されている精神分析的とはどういうことかについて、いろいろな見解があったり、個々人で幅があるところにもつながるのかもしれません。

話がそれましたが内的設定を保持するため、分析的な治療者となるための訓練として言われていきたことは、セミナーを受講する、個人スーパービジョンを受ける、個人セラピー(分析)を受ける、でしょうか。最近はインスティチュートに所属することも言われてきているように思います。

個人的にはこの中で、一番大きな体験はセラピーを受けることであるように思います。もちろんスーパービジョンも欠かせません。どれか一つとは選べないものですが、セミナーなどの座学よりは治療者やスーパーバイザーとの関係の中で学ぶことのほうが大きな体験となっています。セミナー受講は入り口としての役割と、その後実践を重ねていく中で様々な形や意味を持ちながら継続していくもののように思います。もちろん書籍を読んだりも必要でしょう。訓練や学びは生涯続いていくもののように思います。

現在私はインスティチュートには所属しておりませんが、セミナーのほか、グループでのケース検討会に参加し、個人スーパービジョンをうけ、個人セラピーを受けています。スーパーバイザーとしてお願いした方は複数おりますが、物理的な事情で短い期間で終わらざるをえなかった方もおります。医師で精神分析家の方には5年以上、また、分析的な実践をしている臨床心理士の方に受けています。

当初思いついたことについて、書いてしまいました。この後はどのようにブログを使うか考えつつ、少しずつ更新していきたいと思います。

参考文献
1) 萩本快 北山修編著(2021)コロナと精神分析的臨床「会うこと」の喪失と回復,木立の文庫

2022年12月11日